第三章「ホシノとタイヨウと賢者の石」
4人が病室で話していると、扉が開いた。
白衣を着た大人……ホンダカズだ。
「スミゾラマリが病院の資料などを盗み逃げた」
「不審な動きが多く調査していたが、証拠を突き付ける前に行動を起こされてしまった」
「賢者の石も間違いなくスミゾラマリの仕業だ」
淡々と感情無く言葉を並べる。4人はその話を上の空で聞いていた。
白衣を着た男は、話を伝えると病室を後にする。
マリス先生が、賢者の石を盗んだ。
病院内を調べて出て来た証拠品と、毎日いてくれたマリス先生が突然消えた事実は、その言葉を信じるには十分すぎるものだった。
ハレのペガサスがいなくなり、ユキの魔法が使えなくなり、タイヨウとホシノの賢者の石が盗まれ、
……そして、マリス先生まで消えてしまった。
その日、4人は、一言も話すことなく眠りについたのだった。
カタカタカタカタ。
職員室で白衣を着た男がモニターの明かりに照らされながら、キーボードを打ち込んでいる。
たくさんの画面には、病院内のあらゆる場所が監視カメラで映されていた。
被験者番号028「ハレ」
ペガサスの幻想が消える。
図書室に様々な資料を用意し、ペガサスが寿命で死んだと思い込ませる事に成功。
7月6日。無事、幻想から脱却。
被験者番号055「ユキ」
魔法を使えるという幻想を抱く。二度と使用しないよう促したが失敗。
プランBに変更。計画は問題無く進み、10歳で魔法使いは魔法が使えなくなると思い込ませる事に成功。
7月6日。無事、幻想から脱却。
被験者番号099「ホシノ」、被験者番号100「タイヨウ」
共有幻想を抱く。賢者の石という架空の道具を作り上げる。
共有幻想は話の齟齬などが生まれやすく、共有幻想を抱いた被験者は過去全て脱却失敗に終わっている。
賢者の石はスミゾラマリに盗まれたと思い込ませる事に成功。
7月7日。無事、幻想から脱却。
文字を打ち終えると、白衣を着た男が深く息を吐きだし、椅子にもたれこんだ。
―――次の瞬間、爆発音が鳴り響いた。