【ラップに、一番大事なもの、それは「韻を踏む」ことだ】
「ライム」
キャラクターシート
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(ポリシー)
ラップに、一番大事なもの、それは「韻を踏む」ことだ。
この一点だけは、チャンピオンと同じくらい使いこなしている自信がある。
圧倒的なボキャブラリーをもって、言葉で遊ぶ、それがラップの醍醐味。
【言霊】が誕生してから、私のボキャブラリーは半減した。
当たり前だ。ディスる言葉が全て使えなくなったのだから。
本来なら、チャンピオンの座に着いているのは、間違えなく私だっただろう。
今でも全力でラップバトルをしても良いのなら、勝てる自信はある。
けれども、私が全力でラップバトルをする……それは即ちディスを解禁する事。
もし勝てたとしても、相手を殺してしまうだろう。
(ストーリー)
―――あなたはチャンピオンの好敵手だ。
自称ライバルだとあざ笑う者もいる。それも仕方ない、戦績は全敗だから。
チャンピオンへの挑戦権を持つ者の中では、一番戦った回数は多く、だからもちろん敗けた回数も多い。
「負けても負けても、こんなに楽しそうに何度も立ち上がってくる奴は初めてだ」
100連敗を記録したあの日、彼からそう声をかけられた。
楽しい訳ないだろう!?悔しい、むかつく、勝ちたい、倒したい!
でも、それ以上に、チャンピオンに認められた気がして……素直に嬉しかった。
「喉に病気が見つかって、手術しなければならない」
一週間前、チャンピオンから突然の告白を受けた。
手術の成功率は著しく低く、万が一成功しても声が出せる可能性はゼロ、との事だった。
……私と彼との関係は、ラップでしか語れない。
チャンピオンを倒し、私の連敗記録にピリオドをうって、後は任せてくれよと、そう伝えたい。
(今日の出来事)
12:00~
今日の試合会場であるラップバトルアリーナへ到着した。控室で準備を整える。
偶然にも今日、チャンピオンとの試合が組まれていた。
今日の試合がチャンピオンにとって最終試合になるのだが、それは公表されていない。
「【引退試合】なんてテンション下がるラップを観客に見せたくない。
最後まで戦い続け、無敗のまま伝説としてこの業界を去る」
まったく、あいつらしい。けど、無敗記録は、今日で終わりだ。
13:00~
たくさんの観客の声援が会場にこだまする。
「ライム、お前の連敗記録も今日で終わりだな」
チャンピオンが、マイクを通さず私だけに聞こえるように耳元で、そう言った。
「俺が引退しても、お前に匹敵するラッパーは他にふたりいる。そいつらに勝ってチャンピオンになれるか?」
何が連敗記録だ!何が引退だ!!すべてに言い返したかったのに、何も言葉が出てこない。
「ひとりはお前より確実に強い奴がいるから、まあ、精進するんだな」
何で自分がいなくなった後の話をしているんだ!今!ここにいる!私を!!見ろ!!!!
チャンピオンとの最後の試合が始まった。
14:00~
……試合が終わった。結局、私は一度もチャンピオンには勝てなかった。
チャンピオンが、もう思い残す事はないみたいな清々しい顔で握手を求めてくる。
完全な勝ち逃げ、悔しい、悲しい、もっと彼とラップがしたかった。私は黙って差し出された手を握り返した。
―――自分の控室へ戻り、ただただ茫然と虚空を見つめる。
これで、終わりか。
15:00~
試合が終わっても未だ鼓動が鳴りやまない。
今までの人生で一番のラップだった、私の全てを出せた。
……それでも勝てなかった。
今までの思い出を振り返っていると、いつの間にかかなりの時間が過ぎていた。
不意に、ピコン、とスマホが音を鳴らす。
……チャンピオンからだ。
【ヘイ、お疲れ、ライム。
年賀状の文化が年々廃れてきて、メールやラインであけおめが済まされているらしいな。
常にトップを走る俺も、もちろんそれにノッていく。
つまりそう、遺書をラインで送るという試みだ。クールだろ?
俺が自殺する理由は、話すまでもなく分かってくれるかな?分からないか。
ま、後は任せた、俺は伝説として生きていくよ】
16:00~
全速力でチャンピオンの控室へと走る。
チャンピオンの控室へ行くと、横たわるチャンピオンがいた。
驚いて彼の身体を起こそうとすると、バイブスが入ってくる。
バイブスも慌ててこちらに駆け寄る。
しばらくすると、フロウが控室へ入って来た。
(目標)
結局チャンピオンに勝てないまま、彼は自殺してしまった。
ライバルである自分には、誰よりも彼と戦い彼に負けた自分には、ゆずれない事がある。
あなたの心臓の高鳴りは止むことを知らない。
そのリズムが彼との闘いの日々を思い出させる。
何が何でもチャンピオンになってやる。
邪な考えが脳裏を支配する。それでも何をしてでも、成し遂げる大義がある。
現在チャンピオン候補は自分を含めて三人。自分がチャンピオンになるために……。
【誰かを犯人にしたてあげ、追放する】
それがあなたの目標だ。
(秘密)
チャンピオンの遺書、あの内容は間違えなく彼が書いた物だ。
【言霊】にはランクがあり、言葉を使いこなすレベルが高くないと出来ない、つまり一般的には未だ知られていない裏技がある。
それが【言霊自殺】だ。
チャンピオンならもちろん出来るし、最低でも私くらいの実力がないと出来ない言霊の使い方。
鏡で自分の眼を見ながら高ランクの言霊を放つ。ただ、それだけで自殺できるのだ。
チャンピオンはおそらく、言霊自殺をしたのだろう。
(行動の指針)
チャンピオンが遺書を送ってきた事は、隠しておくべきだ。
誰を犯人にしたてあげればチャンピオンになれるだろうか?