「ハレ」
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「ハレ」
僕はハレ、11歳。この病院では最年長らしい。
僕と同い年くらいの子供もたくさんいたんだけど、みんな退院してしまった。
同室にいる3人、ユキとホシノとタイヨウは、もう何年も一緒にいる。
ユキはひとつ年下の女の子。成績も優秀で、年下なのに僕より評価点が高い。
ホシノとタイヨウはふたりとも9歳。流石に2歳も年下の二人には評価点で負ける事は無い。
けど、ふたりは手先が器用で支給された紙きれで驚くほど細かい物を折って創ったりする。
……僕にはみんなに内緒にしている事がある。中庭でペガサスと密会しているんだ。
ペガサスっていうのは白い羽と角が生えた馬みたいな動物。3年程前、中庭で倒れていたのを助けてあげた。
その後、僕がひとりで中庭にいると、たまに空から会いに来てくれるようになった。
夜に病室をこっそり抜け出してペガサスに会いに中庭に行くことも増えて来た。
もちろんペガサスとは、会話は出来ないんだけど、なんとなく誰かに言ったらもう会いに来てくれない気がして、ずっと内緒にしている。
大人はみんな、機械みたいに冷たい目で僕たちを見てくる。
けど、ひとりだけ変わった大人もいた。僕たちの指導係を務めている炭空マリ(すみぞらまり)先生だ。
他の大人と違い、僕たちが何かするとすぐに「そんな事しちゃだめでしょ!」と怒ったりする。
たまたま英語の辞書でmaliceって言葉を見かけた。悪意、って意味らしい。
僕たちは4人で「いつも怒っている炭空先生のことだ!」と笑い合った。
それから、マリ炭空→マリス、みたいな連想で、マリス先生と呼ぶようになった。
先生の前でそう呼ぶと、決まって怒るんだけどね。
一週間くらい前から、ペガサスが会いに来てくれなくなった。
今までこんな事無かったのに、何かあったのだろうか?
もし、ペガサスが困っているなら、助けてあげたい。たとえ彼ともう会えなくなっても。
……みんなに相談してみよう。ユキとホシノとタイヨウなら、絶対に助けてくれる。
(目標)
ペガサスが消えた原因を探す。
【固有情報】
・案内書「病院について」
新しい本。この病院について書かれている。
『幼い頃に両親をなくした子供たちのために作られた病院。ここでは、お金が無い子供たちも治療を受けられる』
・絵本「少女と魔法」
古びた絵本。幼い頃に4人で読んだ気がする。魔法使いに憧れた少女のお話だ。
魔法使いはひとつしか魔法を覚えられない、少女がどんな魔法を覚えるか葛藤する物語。